- HOME > 役立つマメ知識 > タイヤの窒素ガス充填は効果あるの?メリットは?
タイヤの窒素ガス充填は効果や意味があるの?
タイヤの空気圧メンテナンスに有料の窒素ガス充填サービスがありますが、ときどき相談されるので、今回はこれについて書いてみます。
窒素ガスを入れるメリットについて巷で言われているのが以下の事です。
- ・空気が抜けにくい
- ・不燃性ガスで燃えにくい
- ・ゴムやホイールの劣化抑制
- ・静粛性が上がる(静かになる)
- ・乗り心地や燃費が良くなる
箇条書きにしてみると、さも凄い効果があるように思いますが、実際のところどうなのか、れぞれ書いていきます。
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窒素ガスは空気が抜けにくい
タイヤの窒素ガス充填で一番の利点と言われるのが「空気が抜けにくい」と言う事です。
確かに窒素は酸素に比べてゴムを通りにくく、空気圧が下がりにくいのは事実です。
通常の空気を入れたタイヤは1ヶ月で10〜20kPaほど抜けてしまいますが、窒素のみだと1ヶ月程度ではそれほど変化しません。
ですがまったく抜けないと言う事ではありません。
窒素ガスの場合でも、最低3ヶ月に一度は空気圧チェックしましょうと言われるのも少しずつではありますが抜けていくからです。
なので、一度窒素を入れればずっとメンテナンス不要ではないわけです。
また、「窒素だとタイヤ空気圧が変化しにくい」という事も言われます。(膨張率の違いから温度差によるタイヤの空気圧変化が少ないという事)
そのため、常に乗り心地やタイヤ性能を存分に発揮できると言います。
ただこれも、空気中に多くある酸素と窒素の膨張率の違いに、さほど大きな差はないんです。
一般的に注入する自然の空気(大気)には窒素が約8割、酸素が約2割、その他二酸化炭素や水素など希ガスが微量であり、そこに湿度の違いによって数パーセントの水蒸気(水分)が混ざっています。つまり初めから窒素が大半を占めています。
そしてこの中で一番膨張率が大きいのは水蒸気です。
水滴から水蒸気になると体積は約1700倍となりますから、たとえ数%でも空気に混入していると、空気充填時から気温やタイヤ温度が変化すると、空気圧変化に大きく影響します。水分が一番良くないわけ。
「当店では窒素ボンベを使っています!」と売りにするのも、窒素ガス充填サービスでは窒素発生装置を使う場合と窒素ガスボンベの2種類あり、ボンベ注入だと水蒸気が混入しづらいからだと言われています。
じゃあ、普通のエア充填だとどうかというと、空気を圧縮したときに水蒸気は水滴に戻ろうとしますから除湿作用があり、一般的なエアゲージでも水抜きしていれば水蒸気が多量に混入する事は少ないです。
また、コンプレッサー(空気圧縮装置)にエアドライヤー(除湿装置)が付いている場合は、乾燥した空気を注入できます。
ちなみに、最も水分がタイヤに入りやすいのは、ホイールにタイヤを組み付ける時なんですね。組み付ける日の湿度やタイヤ内側に残っていた水分が、一番問題だったりします。
これは窒素ガス補充と関係ないところでの問題です。
タイヤの窒素ガスで一番取り上げられるのが、“飛行機やF1のタイヤにも使われてる”というフレーズですが、飛行機のように高度何千メートルも上空と地上の大きな気圧差を行き来したり、レースで時速300キロなど長時間の超高速走行になれば、タイヤの負荷も相当ですし空気圧のわずかな違いが致命傷となる事もあるかもしれませんが、私たち車の交通事情程度で効果を期待できるかと言うと、はなはだ疑問です。
窒素は不燃性ガスだから燃えにくい
「自動車タイヤが爆発して火災した」と聞いた事がありますか?無いです。
通常使用の範囲で窒素が不燃性ガスだからと言われて、「だから何?」というレベル。
正直、これをメリットに加える意味が分かりません。
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窒素ガスはゴムやホイールの劣化を抑制
ゴムやホイールは酸素で酸化して劣化します。そこで窒素ガスなら劣化しないと言っても、タイヤ内部だけ窒素なだけで周りは空気です。
また、タイヤの寿命が5年程度としたら、その期間ずっとタイヤの内側だけ窒素にしたとしても、劣化の違いを感じるのは難しいと思います。
どちらかと言うと、タイヤの劣化より先に溝の摩耗が一般的ですよね。
「年間走行距離がほとんどないから」という方、3ヶ月に一度ずつずっと窒素充填したとして1回2000円(500円4本)で年間8000円。5年経てば4万円です。
さらにそれ以上タイヤを使うより、新しいタイヤを買うためにお金を使う方がよほど安全で良いと思います。
ぶっちゃけ、5年くらいは普通に使ってもゴムの劣化的には充分持ちます、溝が残っていれば。タイヤメーカーも3、4年でのタイヤ交換を推奨してますし、5年の使用期間でも長いくらいですから、それ以上はあまりおすすめ出来ません。
窒素ガス充填で静粛性が向上する?
窒素は空気に比べて音の伝導率がゆっくりになるため、窒素ガス充填したタイヤは耳障りなロードノイズが減って静粛性が向上すると言われます。
ただこれもはっきり体感できるレベルの話とは言えません。
実際に窒素ガスを試した口コミなどで「静かになった」という方も見掛けますが、正直なところ、勘違いの範囲と思ってしまいます。
もしくは、空気圧をこまめに見てない方で、少ない空気圧だからロードノイズが高くなっていただけ、窒素ガス充填で空気圧が適正になったから静かになったという事も考えられます。
窒素や空気に関係なく空気圧が低いとタイヤのノイズは上がりますから、適正な空気圧を保つ事を心掛けたり、静粛性の高いタイヤブランドを選ぶ方が現実的だと思います。
乗り心地や燃費が良くなる?
窒素ガスを入れたか空気を入れたかで乗り心地や燃費に違いは出ません。適正空気圧かどうかだけです。
空気圧が少なく潰れたタイヤだと抵抗が大きくなるので、騒音や燃費の悪化に繋がりますが、適正空気圧や若干高めにすれば騒音や燃費は改善されます。窒素ガスと関係ありません。
強いていえば、窒素は空気圧が低下しづらいから、空気圧管理が苦手な方にとったら低下した状態が減るので、燃費が良くなると言えるかもしれません。
窒素と空気でタイヤの硬さが変わる訳ではありません。空気圧の変化で乗り心地が変わるだけです。
窒素ガスだと空気圧が変化しづらいから燃費も乗り心地もキープできるという、ちょっとした“こじつけ”です。
窒素ガス充填のまとめ
タイヤの窒素ガス充填について長々と書いてきましたが、まったく効果がないと断言してはいません。
確かに空気は抜けづらく空気圧の変化も少ないから、常に窒素ガスを入れ続けるならこれほど良い事はないでしょうね。
ただ、窒素だからまったく抜けない訳ではないし、一度入れたからといって半年も放っておいては危険です。定期的に補充する必要があります。
じゃあ2、3ヶ月に一度窒素ガスサービスを受けるとしたら年間でもけっこうな金額になりますし、その金額から見合う効果はというと、「?」と言わざるおえません。
世の中には窒素充填をしていない人の割合が圧倒的に多いですが、それらの人に不具合が起きている訳ではないですからね。
何より一番大切なのは、空気圧をこまめにチェックして常に適正空気圧かそれよりちょっと高めを維持する事。これに尽きます。
窒素ガス充填のメリットは結局、遠回しに空気圧管理のメリットがほとんどですから、窒素でなくてもいいわけです。
もちろん、釘を踏んでパンクしたりバルブからエア漏れなど物理的なものに関しては窒素も何も関係ありませんし、月に一度くらい空気圧チェックする方が安心でしょう。
それでも興味がある方は、自分で体感してみるためにも一度試したら良いんじゃないでしょうか。それほど高額ではないですし。
ただしその時は、空気圧を適正に合わせてからショップに行くようにしましょうね。でないと正しい違いになりませんから。
ちなみに窒素ガス充填を行うショップ店員さんに「窒素ってどうですか?」と聞いても、「スゴく良いですよ」としか言えませんからあしからず。商品として販売してるのに駄目なんて言えませんからね。
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